アニメーション管理ソフトウェアのTOON BOOMは海外共同制作へのパスポート
ブログ Text_山口 晶
2023年08月02日
カナダは、アニメーション管理ソフトウェアで海外共同制作を推進
カナダは映画製作が盛んな国で、アニメーション・映像産業に力を入れています。
アニメーション管理ソフトウェアで海外との共同制作も盛んです。
下記を読めば、カナダは国をあげてアニメをバックアップしていることがわかると思います。
- 行政からの映像産業の支援 (助成金や税額控除)
- アニメーション、VFX、3Dやゲームスタジオが多い
- 様々な風景や建築があり、映画撮影が多い(多くのハリウッド映画がカナダで撮影されている)
- アニメーションの専門学校も多く、現役のプロが講師となり、業界と連携を取りながら、 現場が必要とする次世代のクリエイターを育成
- 産業としてエコシステムが成立している:技術面・IT産業にも力を入れており、アニメーション ・映像産業では、モントリオールを拠点とする研究開発も多く見られる
- カナダは(日本を含む)60カ国以上と海外共同制作協定を締結
Toon Boomの本社もモントリオールが拠点です。ここは、トップスタジオが集結していますから、クリエイターが何を求めているかをリアルタイムで聞くことができます。アニメーション管理ソフトウェアは、彼らの意見を汲み取って製品化しました。アニメ業界を発展させたいというToon Boomのメンバー全員の想いが込めらています。
アニメーションの海外共同制作とは?
海外のアニメーション業界では「国際共同制作-International Co-production」という言葉をよく耳にします。 概要を簡単に説明すると、海外では90年代後半から、主に欧州各国の政府が、アニメーション産業の経済的価値に注目するようになりました。政府はコンテンツ産業や知的財産の展開に力を入れるようになり、本国のクリエイターやスタジオを活用して制作された作品を公共・民間放送局が放映して「自国のコンテンツ」を発展させる姿勢を持ち始めた時代でもあります。
しかし、アニメーションの制作費を捻出するためには多数の出資パートナーが必要になります。 国際共同制作は、制作会社や配給会社等の複数のパートナー、放送局が話し合い制作や予算、スケジュールに合意しながら技術や資金を出し合って作品を創る方式です。 なお、国際共同制作協定を締結している国の制作会社は、同じ知的財産(IP)が(協定の条件を満たしていれば)、各々の国で「国作」と認識され、政府の助成金や制作費を補助する支援ツールを活用して一部の資金を調達できます。
つまり、同じ作品が双方の国で「国作」と認められることは、作品が「二重国籍」を持つということになります。 これにより、各出資者のリスクを低下し、互いの国の放送展開先を確保できることになるわけです。
海外共同制作をスムーズに進めるために重要なこと
共同制作においては、作業環境が統一していれば、データ共有により、共同作業がより効率的になります。 例えば、フランスとカナダの国際共同制作で、両国はプリプロダクションとポストプロダクション作業を行い、その他の作業を韓国やマレーシアのスタジオへ分担するという流れはよく見られます。
国際共同制作では、発注・下請けの関係ではなく、共同作業の環境で制作されます。同じ制作で多数のパートナーと共に同じカットを共有し合い作業するケースが多いです。複数のクリエイターやアニメーターが作業するからこそ、同じツールを利用する利便性を重要視します。
こうした理由から、 Toon Boomは制作に携わるメンバー全員が使いやすいアニメーション管理ソフトウェア開発に着手しました。制作現場の声を反映させたことで高評価を得て、現在では大規模なアニメ制作企業から小規模なスタジオまで、様々なスタジオにご利用いただいています。
アニメーション管理ソフトウェアの代表的なツールは下記の3つ。
浮かんだストーリーを即レイアウトできる「Storyboard Pro」
アニメーション制作に欠かせない機能が満載の「Harmony」
リアルタイムで制作工程の管理が容易になる「Producer」
制作したアニメーションと素材類は、それぞれのソフト間で瞬時に共有されるため、プリプロダクションからポストプロダクションまで、スムーズに業務を進めることが出来ます。アニメーション管理ソフトウェアの誕生で、世界のアニメーション業界は飛躍的に成長しました。
Toon Boomは創立以来、2Dアニメーションにおいて、ベストな環境を多くのスタジオに提供してきました。技術的な面では、Toon Boomのアニメーション管理ソフトウェアは2度エミー賞を受賞し、業界の基準ツールとして評価されております。
一方、国際共同制作が発展する中、Toon Boom社は、多国のアニメーション産業とその経済展開に参画。アナログからデジタルへの環境の切り替えが、作業への効率化や生産性だけでなく、長期的に産業の発展に繋がるというフィロソフィーを発信してきてました。
設立以来、25年間このフィロソフィーに同感するToon Boomコミュニティーは常に拡大してきました。今は、世界のクリエイターからスタジオをはじめ、学生からベテランアニメーター達が集まるサークルとなり、多数の2Dアニメーションの教育機関も次世代のアニメーターに、Toon Boomでアニメーション制作を教えています。
Toon Boomのアニメーション管理ソフトウェアを駆使して、アニメーションを制作することで、海外の2Dデジタルアニメーションコミュニティー内で多国のパートナーと繋がることができます。これはいわば、国際共同制作のパスポートです。
異文化への理解を深めて、新しい作品を生み出す
国際共同制作の現場では、色んな「壁」を乗り越えていきます。時には乗り越えられず、失敗から学ぶこともあります。しかし、国境を越え、言葉や作業の文化の壁を乗り越えて、一緒に作品をチームとして制作することにより、有意義な刺激を貰える経験でもあります。
プロとして、個人としても多いに学ぶこと成長できるチャンスでもあります。信頼関係を築き上げながら、また新しい作品を創る「仲間」ネットワークが広がるチャンスでもあります。自分だけじゃない。世界には高い志でアニメ制作に打ち込む人が大勢いる。そんな人達と繋げたくて、Toon Boomはアニメーション管理ソフトウェアを開発しました。
アニメーションの可能性を信じて、まだまだやれることは沢山あります。もっとこうした方がいい。そんな意見はいつでもウェルカムです。今後も一つ一つの作品と共に、アニメ業界の成長を支えたいと思っています。