JAniCA:日本アニメ業界の未来を支える若手育成と技術共有の担い手

ブログ Text_豊田美紀
2024年07月03日

JAniCA:日本アニメ業界の未来を支える若手育成と技術共有の担い手

近年、日本のアニメ産業は市場規模を拡大し続け、世界中の人々を魅了する文化の一つとなっている。しかし、その裏側では、アニメ需要の高まりに伴う制作本数の増加によって、アニメーター人材の不足や高齢化、低賃金や長時間労働など深刻な問題も浮き彫りになっている。この現状に対し、課題解決に取り組んでいるのが、一般社団法人日本アニメーター・演出協会(以下、JAniCA)だ。今回は、『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(TBS系列)、『灼熱の卓球娘』(テレビ東京系列)などを手掛けたアニメーション監督であり、JAniCAの代表理事である入江泰浩氏とJAniCA事務局長の大坪英之氏に取材を行い、同団体の活動内容や今後の展望、アニメ業界の未来について伺った。

JAniCAの取り組み

JAniCAは、アニメーター、演出家、そしてアニメ業界を支える人々で構成され、業界全体の活性化と発展を目指し、社会保障の充実、技術継承、情報発信、若手育成、労働環境改善に取り組んでいる。アニメーター支援を重視するJAniCAは、アニメーターの生活向上と福利厚生の充実を目指し、社会保障の拡充や健康診断などの支援を行う他、アニメ業界を超えて国にも要望を行い、制作者の労働環境改善に取り組んでいる。また、クロッキー会やパース・レイアウト講座などの活動を通じて、若手アニメーターの技術向上を支援している。

ACTF: デジタル技術の普及と情報共有の場

ACTFの様子 ACTFの様子

そうした技術継承・情報共有の推進におけるJAniCAの代表事例の一つが、アニメーション制作におけるデジタル技術に関する情報の提供を目的とした「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(以下、ACTF)」である。

「2000年初頭くらいから、撮影や仕上げがデジタルに変わり、背景や原画・動画も徐々に変化してきています。その中でどういう技術があり、どのようなツールが使用されているのか、さらにはこれからどういうものが要望されてくるのか、様々な段階の情報を業界内で共有する場が必要なのではないかというところからACTFがスタートしました」(入江氏) 。

アニメ業界がデジタルへの移行を進める中で生じる技術的課題に対処するための取り組みであるACTFでは、デジタルツールの使用方法や導入事例の共有などが行われ、制作者間、使用者間での情報と技術共有を促進している。

東放学園映画専門学校 アニメーション・CG科 学科主任の景利康弘氏、 ToonBoom Japan のシェーン菅氏 東放学園映画専門学校 アニメーション・CG科 学科主任の景利康弘氏、 ToonBoom Japan のシェーン菅氏

さらに、ACTFはユーザーとツール開発者を結びつける場でもあるという。「何気ないことですけど、タブレットの置き方ひとつ違うんですよね。そうした現場の声っていうのは、実際に使用している人でないと気づかないことなので、メーカーがアニメーターやスタジオからのフィードバックを受けて、ツールの改良や新製品の開発につなげる機会にもなります」(大坪氏)。

デジタルツールの導入が進む一方で、アナログ画材に依拠したワークフローはデジタル画材との相性が合わない場合がある。このような課題に対処するためには、現場の声を反映した情報共有がますます重要になると入江氏はいう。ACTFは、このような課題に対処するため、アニメーターや制作会社、ツール開発者などが集まり、最新技術や導入事例などを共有する場となっている。

業界の未来とJAniCAの役割

入江泰浩氏、大坪氏 入江泰浩氏、大坪氏

ACTFやクロッキー会などのイベントを通じて、制作会社や個人を超えた交流の機会を提供してきたJAniCA。さらに、入江氏は業界の未来について以下のように語っている。

「現在、そしてこれから一番大切なのは若手の育成だと思っています。”師匠の背中を見て学べ”というこれまで主流であった考え方がこの10年間で大きく変わってきていて、若い人材を育成することの重要性が認識され始めています」。

業界における若手人材育成の指針となっているのは、文化庁より委託を受けた団体が実施する若手アニメーター育成事業である。初年度から2013年度まではJAniCAが、2014年度以降は日本動画協会(AJA)が文化庁より委託を受けて行ってきたこの事業は、日本アニメーション業界における厳しい現状、特に育成や制作環境の改善が疎かになっているという課題に対処するために始まった。

ACTFでのトゥーンブームブース ACTFでのトゥーンブームブース

「アニメ業界では、新人として入ったけれども、生活できなかったり、技術的に追いつけなかったりで、数年経ったらその多くが離職してしまうというのが定説になっていたんですね。そうした状況の中、人材育成に力を入れなければならないということで文化庁の事業がスタートしました。そして、この事業に参加して育成を受けた人たちの多くは、業界に残っています。ほとんど辞めていません。初期の段階で教育を受けて、技術を学んだ人たちがこれだけ残っているのは、いかに教育が有益であるか、効果があるかをデータとして物語っています。JAniCAとしても、若手育成の価値を伝え続けていきたいと思います」(入江氏)。

日本のアニメ業界は躍進を続け、世界中で愛される文化の象徴となっている一方で、人材不足や労働環境などの問題を抱えている。こうした課題に、若手アニメーターの育成や技術共有を通じて立ち向かうJAniCAは、日本のアニメ産業がさらなる飛躍を果たすための重要な役割を果たしている。

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Toon Boom Japanは、日本のアニメ業界の未来を担う人材育成に貢献するため、アニメ制作会社や教育機関と連携して様々なサポートサービスを提供しています。その一環として、毎月2回、Storyboard ProとHarmonyの無料ワークショップを開催していますので、ご興味のある方は是非ご参加ください。

また、Toon Boonではアニメーションのスキルを上達したいという方の為に様々なレベルのトレーニングコースを提供しています。自分のペースでトレーニングを進めていただき、コース完了後には認定バッジを取得することができます。詳しい情報は、公式ウェブサイトでご確認ください。

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