トムス・エンタテインメントが海外スタジオと共同制作『インセクトランド』Harmony導入事例
ブログ Text_豊田美紀
2024年03月05日
『ルパン三世』『名探偵コナン』『それいけ!アンパンマン』など人気タイトルを多数手掛けてきたトムス・エンタテインメント(本社:東京都中野区、代表取締役社長:竹崎 忠)。2022年4月よりNHK Eテレで放送を開始した昆虫アニメ『インセクトランド』の制作において、Toon Boom 「Harmony」を導入した経緯やデジタル化への移行、今後の展望についてCG監督を務めたトムス・ジーニーズのなべしげ(渡辺誠之)氏に聞いた。
海外スタジオと本格的な協力体制のもと地上波放送の作品を制作する初の試みとなった今作について、国際共同制作(International Co-production)における海外スタジオとの協働、制作効率の向上をどのように実現したのか伺った。
Harmony導入で海外スタジオとの共同制作に挑む
『インセクトランド』は、俳優の香川照之氏がプロデュースした⾃然教育絵本「INSECT LAND(インセクトランド)」シリーズを原作としたテレビアニメシリーズ。「それいけ!アンパンマン」などを手掛けた川越淳氏を監督に迎え、絵本シリーズから引き続き、フランス人クリエイター、ロマン・トマ氏がキャラクター原案を担当した。
今作にて制作を行ったトムス・エンタテインメントは、デジタル化の波がアニメ業界にも押し寄せる中、デジタル技術の導入を積極的に進めてきた。アニメ制作工程のデジタル化に向けてグループ会社のトムス・ジーニーズとともに様々なソフトを検証していた同社は、今回の『インセクトランド』の制作においてデジタルアニメ制作ツール「Harmony」の導入を決めた。このプロジェクトは、海外スタジオとの国際共同制作を通して地上波で放送される作品に取り組む初の事例となった。当時を振り返り、なべしげ氏は「チャレンジングな取り組みだった」と語る。
「いくつかのソフトを比較してToon BoomのHarmonyを選んだ」
海外スタジオとの共同制作における懸念点の一つが、データのやり取りや制作工程の統一であるが、カットアウトアニメーションや、3Dデータの取り込みや操作も可能な「Harmony」は、従来の制作工程の課題を解決する可能性を秘めていた。
「複雑な制作工程で問題が発生した時、どうしても最初の工程に戻る必要があります。Harmonyでは、1つのソフトの中で一連の工程が完結するため、1人のデザイナーが1つのカットを完成まで持っていくという制作スタイルで、柔軟な対応が可能になり、効率性も向上しました」(なべしげ氏)。また、従来はセクションごとに異なるソフトを使用していたため、データのやり取りや管理が煩雑だったが、「Harmony」の導入により、小規模チームでの効率的な作業が可能となったという。
国際共同制作を成功させる鍵:作業環境の統一とツール選び
アニメ制作において、キャラクターの絵柄が安定せずブレてしまうことはよくある課題だ。海外スタジオとの共同制作では、文化や表現方法の違いから、絵柄の安定性や日本独特の表現方法の伝達において不安があった。しかし、「Harmony」を使用することで、キャラクター崩れを防ぎつつ、滑らかな動きを実現することに成功したという。「キャラクター崩れしない、絵がブレないというところがHarmonyのカットアウトアニメーションのいい点です」。
さらに、「Harmony」の良さは、3DやCGを描く制作者にとって取り組みやすいことである。「実際、CGアニメの制作を担当しているスタッフの中には、従来の1枚1枚フレームを描く手法に難しさを感じている者もいます。そうしたCGスタッフもHarmonyのカットアウトの手法に触れ、その使いやすさに関して肯定的なフィードバックをもらっています」。
アニメ制作の未来を担う人材へ:変化を恐れず、挑戦し続けること
常に進化を続けるアニメ業界において、変化を恐れず、柔軟に対応することが重要だ。「新しい技術を使える人材を求めています。常にアンテナを張り、新しい手法や表現スタイルを試してほしいです」(なべしげ氏)。
プロフィール: なべしげ・渡辺誠之(わたなべ しげゆき)
アニメ・CG監督
1973年生まれ。
トムス・ジーニーズ所属。
代表作
監督『#コンパス短編アニメ』Voidoll、双挽 乃保、魔法少女リリカルルカ、『イケメン戦国◆時をかけるが恋ははじまらない』『ゆかいなアニマルバス』
CG監督・CGディレクター:『インセクトランド』『ファイアボール』シリーズ、『Hi☆sCoool! セハガール』『それいけ!アンパンマン ロボリィとぽかぽかプレゼント』
直感的な操作性と豊富なカスタマイズ機能を特徴とする絵コンテ作成用の『Storyboard Pro』、アニメーション制作用の『Harmony』、プロジェクト管理の『Producer』といったToon Boomのソリューションは、デジタル化の波による変化に柔軟に対応することができる機能を備えています。
Toon Boom Japanは、毎月2回、Storyboard ProとHarmonyの無料ワークショップを開催し、アニメーターの方々の技術向上を支援致します。ワークショップでは、それぞれのソフトウェアの基本操作から、応用的な技法まで、プロのアニメーターが丁寧に指導します。どなたでもご参加頂けます。Toon Boom Japan公式ウェブサイト又はソーシャルメディアでは、イベント情報やプロモーション情報などをいち早くお届けしておりますので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。
Toon Boomが支える海外スタジオとの共同制作
近年、アニメーション制作における国際共同制作がますます盛んになっています。異なる文化や言語を持つチームが協力して作品を制作するため、円滑なコミュニケーションと効率的な作業体制が求められます。その過程において、作業環境が統一されていることが非常に重要となり、データ共有がスムーズに行えれば、制作効率が大幅に向上します。
Toon Boomは1994年の創業以来、世界140カ国で2Dアニメーションにおける国際共同制作を多方面からサポートしてきました。最適な制作環境を提供することに加え、Toon Boomのソフトウェアはエミー賞を2度受賞するなど、業界の基準ツールとして評価されています。
海外共同制作をスムーズに進めるためには、作業環境の統一、コミュニケーションツール、そして信頼できるパートナーが必要となります。
Toon Boomは、国際共同制作における豊富な経験と実績に基づいて、これらの課題を解決するためのソリューションを提供しています。Toon Boomのツールとコミュニティーを活用することで、世界中のクリエイターと協力して、高品質なアニメーション作品を制作することができます。Toon Boomと一緒に、アニメーション現場の未来を築いていきましょう。